マクスウェル方程式の解
前章で見たように、複素表示した電磁場
ところで、電荷・電流密度
この章では、この方程式の解を実際に数値計算することにより、分布を持った電荷・電流密度が時間変動するときの電磁場を計算する。また、その特殊な場合として、運動する点電荷が作る電磁場についても扱う。
10.1電流による電磁波の放射
電流がない場合
最も単純なのが、電流がない場合である(静電荷はあってもよい)。この場合は、
適当に
なお、赤色は電場、緑色は磁場、表示されている領域の1辺は
電気双極子放射
正の電荷と負の電荷が近接してペアになっているものを電気双極子という。電気双極子の電荷間の距離が周期的に変化することにより、電磁波が放射される。これを電気双極子放射という。
例えば、右図のようになる。
チェレンコフ放射
電荷密度が、光速以上の速度で運動する際にも衝撃波のような電磁波が放射される。これをチェレンコフ放射という。荷電粒子の場合、光速以上に加速することはできないが、密度分布の場合には、見かけ上動いて見えるように変化させることで、光速を超えることが可能である(これは例えば、電光掲示板を流れる文字について、実際に何かが移動しているわけではないし、動く速さにも上限がないのと同じである)。あるいは、水中など、電磁波の速度が遅くなる媒質中では、荷電粒子の速度が電磁波の速度を超えることが可能であり、チェレンコフ放射が起きる。
右図は、電荷密度が光速の2倍で等速度移動する場合である。
10.2点電荷による電磁波の放射
荷電粒子が十分小さく点とみなせる場合には、前章で与えたマクスウェル方程式の解の公式の積分を実行することができる。
点電荷が作る電磁場:リエナール・ヴィーヘルトの公式
点電荷が作る電磁場を計算するには、前章の【9.1-注5】を使えばよい。積分が実行でき、以下の【10.2-注1】の式(
【10.2-注1】点電荷が作る電磁場:リエナール・ヴィーヘルトの公式
運動する点電荷(電荷
導出
点電荷の電荷・電流密度は、
等速度運動
点電荷が等速度で運動している場合、右図のようになる。これは、静電場のクーロンの法則をローレンツ変換して求めることもできる。等速度の場合には、電磁波を放射しない。
制動放射(単振動)
荷電粒子が加速度を受けることによって電磁波を放射することを、制動放射という。まず、加速度が速度と平行な場合として、単振動を考える。すると右図のようになる。
制動放射(円運動)
次に、加速度が速度と垂直な場合として、円運動を考える。すると右図のようになる。
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