連続体力学編 第8章

多次元弾性体の場合

弾性体の微小振動が満たす線型方程式は、ナビエ方程式(2)である。

3次元と2次元の運動方程式も線形化する

3次元と2次元の運動方程式も、微小振動を考えて線形化したい。

8.13次元弾性体の運動方程式の線形化

8.1.13次元弾性体の振動の線形化→ナビエ方程式(2)

等方的な弾性体からなる立体の運動方程式は、第2章で述べた様に 𝜌¨𝒙=𝜎𝜎=𝜆tr𝜖+2𝜇𝑅𝜖𝑅T(1) となる。体積力は無視した。線形化するために、次の仮定を置く:(1)釣り合い時に自然状態(=変形しておらず応力がゼロの状態)になる。(2)物質は一様、即ち、 𝜆,𝜇 は定数。(3)変位は微小であり応力テンソル 𝜎 は変位の1次近似で表される。これらの仮定から、 𝜎 は、以下のように線形化される:𝒙 から変位 𝒖 に変えた) 𝜎=𝜆(T𝒖3)+2𝜇⎜ ⎜ ⎜𝒖T+𝒖T21⎟ ⎟ ⎟ これを式(1)に代入すると、知りたかった線型方程式が得られる:(ナビエ方程式) 𝜌¨𝒖=(𝜆+𝜇)T𝒖+𝜇Δ𝒖(2) 𝒖𝑡,𝒙 を求めれば、釣り合い時に 𝒙 に合った点の時刻 𝑡 に置ける位置が、 𝒙+𝒖𝑡,𝒙 の形で分かる。 ΔT をラプラス演算子という。

8.1.2シミュレーション

外力がない場合、シミュレーションを行うと、下図のようになる。左から順に、縦波だけの場合、横波だけの場合、真上に釣り上げた初期変位の場合である。右端の場合、縦波は横波の2倍の伝播速度を持つように設定しており、先に縦波が伝わり、後から横波が続くことが見て取れる。これはちょうど、地震の揺れを感じる際に、最初にガタガタとした小刻みな振動(P波と呼ばれる縦波)があり、その後、大きな横揺れ(S波と呼ばれる横波)がやってくるのに対応している。

一方、外力がある場合、シミュレーションを行うと、下図のようになる。左から順に、縦波だけの場合、横波だけの場合である。

8.22次元弾性体の振動の線形化

3次元空間中における2次元弾性膜の運動方程式を線形化する。

8.2.1平面上の振動

膜が常に平面上にある場合を考える。即ち、膜と垂直な方向への変位がないとする。 𝒙 は2次元のベクトルとみなせばよい。すると、前節の場合と同様の仮定の下、以下のナビエ方程式を得る: 𝜌¨𝒖=(𝜆+𝜇)T𝒖+𝜇Δ𝒖 𝒖𝑡,𝒙 は、釣り合い時に点 𝒙 にあった要素の変位ベクトルである。

8.2.2膜に垂直な振動

膜上の点が、膜に垂直な方向にだけ微小振動する場合を考える。その方向の変位を 𝑢 と書くことにすると、この場合の運動方程式は 𝜌¨𝑢=(𝜆+2𝜇)Δ𝑢 となる。

8.3縦波と横波は、波動方程式に従う

ナビエ方程式(2)は、前章のように波動方程式ではない。一方、シミュレーションで見たように、波動は、縦波と横波を含んでいる。線型方程式の場合、2つの解の和は再び解となるので、縦波の解と横波の解を足したものは解になる。この節では、ナビエ方程式(2)の解は、常に縦波解と横波解の和で書けること、そして、縦波解と横波解は波動方程式に従うことを見る。

8.3.1縦波と横波が従う波動方程式:式()

ベクトル場 𝒖 は、縦波 𝒖 と横波 𝒖 に分離できると期待される: 𝒖=𝒖+𝒖 これは、実際に可能であり、ヘルムホルツ分解という【8.3-注1】

この分解を行うと、式(2)はそれぞれの成分に対して ¨𝒖=𝜆+2𝜇𝜌Δ𝒖¨𝒖=𝜇𝜌Δ𝒖 となる。実際、この式が成り立てば、縦波は縦波であり続け、同様に、横波も横波であり続けることが分かる。よって、初期変位および初期速度を縦成分・横成分に分離しておけば、縦波と横波に分離している。これらの和は、初期条件およびナヴィエ方程式(2)を満たす。両成分とも、3次元の波動方程式を満たすわけである。縦波のほうが、伝播速度が速いことが分かる。

3次元の波動方程式の初期値問題の解を与える公式は、どのようになるだろうか。前節の1次元の場合の方法は使えなさそうである。次章で、この公式を扱う。

【8.3-注1】ヘルムホルツ分解

2次元または3次元空間のベクトル場 𝒖 は、以下のように分解できる:(ヘルムホルツ分解) 𝒖=𝒖+𝒖 𝒖,𝒖 は、それぞれ縦成分および横成分といい、以下を満たす。2次元の場合: T×𝒖=𝟎T𝒖=0×[𝜕𝑦𝜕𝑥] 3次元の場合: ×𝒖=𝟎T𝒖=0

証明

第xx章で証明する。