エントロピーの相加性が露わになるように、状態数を書き換えたい。
式(1)が成り立つことを露わに示すように、状態数 Ω を書き換えたい
前章で見たように、2つの容器を熱接触させている系では、全体の状態数は
Ω(12)
、各容器の状態数
Ω(1),Ω(2)
の積になる:
Ω(12)𝐸≈Ω(1)𝐸∗1Ω(2)𝐸∗2(1)
前章ではこれを素直に認めてエントロピーの議論につなげたが、この式はかなり非自明な式である。実際、これを
Ω(1)
について解くと
Ω(1)𝐸∗1≈Ω(12)𝐸Ω(2)𝐸∗2(2)
となり、左辺は容器1だけの量なので、右辺は分数は容器2の性質によらないことになる。これは面白い性質である。これが成り立つことが明らかなように状態数を書き換えたい。これを、状態数のカノニカル表示と呼ぶことにする(結論から言うと式(10))。
この章では、式(1)が成り立つようにカノニカル表示を予想し、その後それを正当化する。
4.1:状態数のカノニカル表示(予想)4.2:状態数のカノニカル表示4.3:マシュー関数から熱力学量が計算できる4.4:統計平均のカノニカル表示
4.1状態数のカノニカル表示(予想)
この節では、(エントロピー総加性を露わにする表示である)状態数のカノニカル表示が、式(5)で表されるのではないかという予想を立てる。これが正しいことは次節で示す。
4.1.1状態数 Ω のカノニカル表示の予想:式(5)
式(2)において、右辺から容器2に関する量を消去したい。まず、右辺分母の
Ω(2)𝐸∗2
を消去するために、分子の
Ω(12)𝐸
から
Ω(2)𝐸∗2
を括り出す:(
∫(1)
は容器1の相空間上での積分を表す)
Ω(12)𝐸=∫𝐻<𝐸1=∫(1)𝐻1<𝐸Ω(2)𝐸−𝐻1∣
∣
∣
∣
∣以下の【4.1-注1】よりΩ(2)𝐸−𝐻1=exp[∫𝐸−𝐻1𝜖=𝐸∗2𝛽(2)𝜖]Ω(2)𝐸∗2=∫(1)𝐻1<𝐸exp[∫𝐸−𝐻1𝜖=𝐸∗2𝛽(2)𝜖]Ω(2)𝐸∗2
これを式(2)の右辺の分子に代入すると
Ω(1)𝐸∗1≈∫(1)𝐻1<𝐸∗1+𝐸∗2exp[∫𝐸∗2+𝐸∗1−𝐻1𝜖=𝐸∗2𝛽(2)𝜖](3)
となる(
𝐸=𝐸∗1+𝐸∗2
を代入して
𝐸
を消した)。
この式(3)が容器2の性質によらずに成り立つわけである。この式の右辺にはまだ容器2の量
𝐸∗2,𝛽(2)𝜖
が残っている。これらが消えるとしたらどうなるだろうか。もっとも単純なのは
𝐸∗2→∞かつ𝛽(2)𝜖=𝛽∗(4)
(
𝛽∗
は平衡状態での逆温度)である:
Ω(1)𝐸∗1?≈∫(1)𝐻1exp[𝛽∗(𝐸∗1−𝐻1)]
条件(4)は、少なくとも容器2を非常に大きくすれば成立しそうである。容器1の量しか登場しなくなったので、添え字を落とすと
Ω𝐸?≈∫𝐻𝑒𝛽𝐸(𝐸−𝐻)≡Ω?𝐸(5)
となる。
∫𝐻
という記号は以下の略記である:
∫𝐻𝑓(𝐻)=∫𝒙𝒑𝑓(𝐻𝒙𝒑)
【4.1-注1】状態数 Ω の公式
エネルギー
𝐸
における状態数
Ω𝐸
と逆温度
𝛽𝐸
は、微分方程式
˙Ω𝐸=𝛽𝐸Ω𝐸(6)
を満たす。この解は、任意のエネルギー
𝐸0
での状態数
Ω𝐸0
を用いて、以下のように書ける:
Ω𝐸=exp[∫𝐸𝜖=𝐸0𝛽𝜖]Ω𝐸0(7)
導出
まず逆温度
𝛽
と状態数
Ω
の関係式は、前章で見たように
𝛽𝐸=˙Ω𝐸Ω𝐸
であり、これは式(6)そのものである。
式(6)は、もし
𝛽𝐸
が定数であれば、見慣れた指数関数の微分方程式である。定数でない場合でも解くことができて、与式(7)になる。実際、与式(7)は初期値
𝐸=𝐸0
で成り立つので、後は式(6)を満たすことを言えばよいが、実際に代入してみればすぐ分かる。
◼
4.1.2式(5)が成り立てば、式(2)も成り立つ
この式(5)
Ω𝐸≈Ω?𝐸
が成り立てば、式(2)も成り立つことが言える:
Ω(12)𝐸≈∫𝐻𝑒𝛽𝐸(𝐸−𝐻)=∫𝐻1+𝐻2𝑒𝛽𝐸(𝐸∗1+𝐸∗2−𝐻1+𝐻2)=∫𝐻1∫𝐻2𝑒𝛽(1)𝐸∗1(𝐸∗1−𝐻1)𝑒𝛽(2)𝐸∗2(𝐸∗2−𝐻2)≈Ω(1)𝐸∗1Ω(2)𝐸∗2
(
𝐸∗1,𝐸∗2
は、
𝐸∗1+𝐸∗2=𝐸
かつ
𝛽(1)𝐸∗1=𝛽(2)𝐸∗2
で定義され、必ず存在する。)よって、確かにもっともらしい。そこで、次節で式(5)が成り立つことを示す。
4.2状態数のカノニカル表示
この節では、式(5)が実際に成り立つことを示す。
4.2.1状態数 Ω の公式:式(9)
示したいのは、式(5)
Ω𝐸≈Ω?𝐸
である。式(3)の導出時と同様に、
Ω?𝐸
から
Ω𝐸
を括り出すことを考える:
Ω?𝐸≡∫𝐻𝑒𝛽𝐸(𝐸−𝐻)=∫∞𝜖=0˙Ω𝜖𝑒𝛽𝐸(𝐸−𝜖)∣
∣
∣
∣
∣˙Ω𝜖=𝛽𝜖Ω𝜖=𝛽𝜖exp[∫𝜖𝜎=𝐸𝛽𝜎]Ω𝐸=∫∞𝜖=0𝛽𝜖exp[∫𝜖𝜎=𝐸𝛽𝜎+𝛽𝐸(𝐸−𝜖)]Ω𝐸=∫∞𝜖=0𝛽𝜖exp[∫𝜖𝜎=𝐸(𝛽𝜎−𝛽𝐸)]⏟______⏟______⏟≡𝐼𝐸Ω𝐸=𝐼𝐸Ω𝐸∴Ω𝐸=1𝐼𝐸∫𝐻𝑒𝛽𝐸(𝐸−𝐻)(8)
式(5)に近い式が出てきた。後は、係数の
𝐼𝐸
を計算すればよい:
𝐼𝐸≡∫∞𝜖=0𝛽𝜖exp[∫𝜖𝜎=𝐸(𝛽𝜎−𝛽𝐸)]∣
∣
∣
∣
∣
∣
∣𝛽は単調減少関数なので指数部分[⋯]はマイナスである(𝜎=𝐸の場合のみ0)。𝛽∼1020程度なのでexp[⋯]は𝜎=𝐸に非常に鋭いピークを持つ。よって、以下の置き換えを行ってよい:・𝛽𝜖→𝛽𝐸・𝛽𝜎≐𝛽𝐸+˙𝛽𝐸(𝜎−𝐸)≅𝛽𝐸∫∞𝜖=0exp[˙𝛽𝐸∫𝜖𝜎=𝐸(𝜎−𝐸)]∣
∣
∣
∣∫𝜖𝜎=𝐸(𝜎−𝐸)=12(𝜖−𝐸)2=𝛽𝐸∫∞𝜖=0exp[˙𝛽𝐸2(𝜖−𝐸)2]∣
∣
∣
∣
∣ガウス積分公式∫∞𝜖=−∞exp[−|𝛼|2𝜖2]=√2𝜋|𝛼|を使う。˙𝛽𝐸<0に注意。≅𝛽𝐸√√
√
√⎷2𝜋∣˙𝛽𝐸∣∣
∣
∣
∣˙𝛽𝐸=𝜕𝜕𝐸1𝑘𝑇𝐸=−˙𝑇𝑘𝑇2𝐸=√2𝜋𝑘˙𝑇𝐸
(途中でデルタ関数で近似できることを用いた。この考え方は後の【4.4-注1】の導出でも使う。)これを式(8)に代入すると、最終的に
Ω𝐸≅√𝑘˙𝑇𝐸2𝜋∫𝐻𝑒𝛽𝐸(𝐸−𝐻)(9)
が得られる。式(5)とは、
√⋯
の部分だけ異なるが、この値は
𝑘log
を作用させると無視できる大きさなので、式(5):(再掲)
Ω𝐸≈𝑒𝛽𝐸𝐸𝑍𝛽𝐸𝑍𝛽≡∫𝐻𝑒−𝛽𝐻(分配関数)(10)(11)
も成り立つ。式(10)を、状態数のカノニカル表示と呼ぶことにする(一般的ではない)。
Ω𝐸
において、肝となる積分部分
𝑍𝛽
を分配関数という。
カノニカル表示(10)は、式(2)とは無関係に導いたものなので、複数の容器が熱的に接触している系でなくても、容器が1つだけの系でも成り立つ(式(2)は式(5)を予想する際に使用しただけ)。
4.2.2温度関数 𝑇𝐸 を求めるには分配関数 𝑍𝛽 を使う:式(14)
カノニカル表示の状態数(10)を求めるには、分配関数
𝑍𝛽
を求めればよいわけだが、これは相空間全体の積分になっており、計算が容易である(状態数を使った元の定義ではエネルギー
𝐸
以下の領域に限定していた)。特に理想気体のように、分子間の相互作用が無視できる場合には、1分子の積分の積になる。
とはいえ、式(10)には、
𝛽𝐸
が登場するので、エネルギー
𝐸
と温度
𝑇
の関係式が分かっている必要がある。分配関数
𝑍𝛽
からこれを求めることができる。エントロピー
𝑆𝐸
の微分
˙𝑆𝐸=1𝑇(12)
を使えばよい。まず、状態数(10)からエントロピー
𝑆𝐸
を求めると(ギブスの修正因子
𝑁!
を含めて)
𝑆𝐸=𝑘logΩ𝐸𝑁!=𝑘log𝑒𝛽𝐸𝐸𝑍𝛽𝐸𝑁!=𝐸𝑇𝐸+𝑘log𝑍𝛽𝐸𝑁!(13)
後は、式(12)の左辺に式(13)を代入すると(見やすさのため引数添え字
𝐸
は省略して)
(左辺)=˙𝑆=1𝑇+𝑘˙𝛽𝐸+𝑘𝜕𝜕𝐸log𝑍∣
∣
∣
∣𝜕𝜕𝐸log𝑍=𝜕𝛽𝜕𝐸𝜕𝜕𝛽log𝑍=1𝑇+𝑘˙𝛽(𝐸+𝜕𝜕𝛽log𝑍)=(右辺)=1𝑇
よって、
(⋯)
部分がゼロとなる:
𝐸=−𝜕𝜕𝛽log𝑍𝛽=∫𝐻𝐻𝑒−𝛽𝐻∫𝐻𝑒−𝛽𝐻(14)(15)
よって、分配関数
𝑍𝛽
さえ求めれば、
𝐸𝛽
が求まるので、その逆関数
𝛽𝐸
が求まり、式(13)からエントロピー
𝑆𝐸
も求まる。即ち、分配関数(11)は、エントロピーと同じ情報を持っていることになる。
4.3マシュー関数から熱力学量が計算できる
分配関数がエントロピーと同じ情報を持っていることが分かった。それならばエントロピーを経由せずとも、分配関数から直接、圧力などの熱力学量を直接導けるはずである。
そのためにまず、状態数
Ω
からエントロピー
𝑆
を
𝑆𝐸𝑉𝑁=𝑘logΩ𝐸𝑉𝑁𝑁!
で定義したように、分配関数
𝑍
からマシュー関数と呼ばれる量
Ψ
を
Ψ𝛽𝑉𝑁≡log𝑍𝛽𝑉𝑁𝑁!(マシュー関数)(16)
によって定義する。(ギブスの修正因子
𝑁!
を含めて書いた。エントロピーと同様に、ハミルトニアンに粒子交換対称性がある場合に必要。)
この節では、このマシュー関数
Ψ𝛽𝑉𝑁
から直接、熱力学量を導く。
4.3.1マシュー関数から熱力学量を求める:式(19)
エントロピー
𝑆𝐸𝑉𝑁
の場合、熱力学量
𝑇,𝑃,𝜇
(それぞれ温度、圧力、化学ポテンシャル)は、
𝑆𝐸𝑉𝑁
の全微分から得られた:
𝛿𝑆𝐸𝑉𝑁≐1𝑇𝛿𝐸+𝑃𝑇𝛿𝑉−𝜇𝑇𝛿𝑁(17)
同様に、マシュー関数
Ψ𝛽𝑉𝑁
の微分を考えても熱力学量が得られるはずである。
そのためにまず、エントロピー
𝑆𝐸𝐸𝑉
とマシュー関数
Ψ𝛽𝑉𝑁
の関係式を求めると(ギブスの修正因子
𝑁!
を含めて)
𝑆𝐸𝑉𝑁=𝑘logΩ𝐸𝑉𝑁𝑁!=𝑘log𝑒𝛽𝐸𝑍𝛽𝑉𝑁𝑁!=𝑘𝛽𝐸+𝑘log𝑍𝛽𝑉𝑁𝑁!⏟Ψ𝛽𝑉𝑁=𝑘𝛽𝐸+𝑘Ψ𝛽𝑉𝑁(18)
となる。あとは、両辺の全微分を取ればよい:
𝛿𝑆𝐸𝑉𝑁=𝛿(𝑘𝛽𝐸+𝑘Ψ𝛽𝑉𝑁)=1𝑇𝛿𝐸+𝑘𝐸𝛿𝛽+𝑘𝛿Ψ𝛽𝑉𝑁
左辺に式(17)を代入して、
𝛿Ψ𝛽𝑉𝑁
を左辺に移せば、最終的に以下を得る:
𝛿Ψ𝛽𝑉𝑁≐−𝐸𝛿𝛽+𝛽𝑃𝛿𝑉−𝛽𝜇𝛿𝑁(19)
よって、分配関数からマシュー関数(16)
Ψ𝛽𝑉𝑁
を計算すれば、この式によって熱力学量
𝑇,𝑃,𝜇
の関数形が求まる。
例えば、単原子理想気体の場合、以下の【4.3-注1】のようになる。
【4.3-注1】単原子理想気体のマシュー関数
単原子理想気体のマシュー関数は
Ψ𝛽𝑉𝑁=𝑁log[𝑉𝑁(2𝜋𝑚𝛽)3/2]+𝑁
である。
エネルギー
𝐸𝑇𝑉𝑁
と状態方程式
𝑃𝑇𝑉𝑁
を求めてみると
𝐸𝑇𝑉𝑁=−Ψ˙𝛽𝑉𝑁=32𝑁𝑘𝑇𝑃𝑇𝑉𝑁=1𝛽Ψ𝛽˙𝑉𝑁=𝑁𝑘𝑇𝑉
となり正しい値になる。またエントロピー(18)は
𝑆𝐸𝑉𝑁=𝐸𝑇+𝑘Ψ𝛽𝑉𝑁=𝑁𝑘log[𝑉𝑁(4𝜋𝑚𝐸3𝑁)3/2]+52𝑁𝑘
となり、第3章の【3.2-注1】の結果に一致する。
導出
分配関数は
𝑍𝛽𝑉𝑁=∫𝑒−𝛽𝐻=𝑉𝑁∫𝑒−𝛽(‖𝒑1‖2+⋯+‖𝒑𝑁‖2)/2𝑚=𝑉𝑁[∫∞𝑝=−∞𝑒−(𝛽/2𝑚)𝑝2]3𝑁∣
∣
∣
∣
∣
∣ガウス積分の公式:∫∞𝑝=−∞𝑒−𝑎𝑝2=√𝜋𝑎において𝑎=𝛽2𝑚とする=𝑉𝑁(2𝜋𝑚𝛽)3𝑁/2
よって、マシュー関数(16)は
Ψ𝛽𝑉𝑁=log𝑍𝛽𝑉𝑁𝑁!≅𝑁log[𝑉𝑁(2𝜋𝑚𝛽)3/2]+𝑁◼
このように、状態数の積分よりも、分配関数の積分のほうが容易に計算できることが分かる。特に、この場合のように、粒子間の相互作用がない場合、分配関数はべき乗の形になる。
4.4統計平均のカノニカル表示
統計平均もカノニカル表示できないだろうか。第2章で述べた様に、エネルギー
𝐸
における物理量
𝑄
の統計平均
⟨𝑄⟩𝐸
は、相空間におけるエネルギー
𝐸
を持つ状態の平均値である:
⟨𝑄⟩𝐸=∫𝒙𝒑𝛿𝐻𝒙𝒑−𝐸𝑄𝒙𝒑∫𝐻𝛿𝐻−𝐸(20)
一方、式(15)を見ると、
⟨𝑄⟩𝐸?=∫𝒙𝒑𝑄𝒙𝒑𝑒−𝛽𝐸𝐻𝒙𝒑∫𝐻𝑒−𝛽𝐸𝐻(21)
と書けることが予想される。確かに、分子の積分に寄与するのは、
𝐻=𝐸
付近の被積分関数だけなので、もっともらしい。
この節では、式(21)が正しことを示す。
4.4.1統計平均のカノニカル表示:式(22)
そのために、式(8)の場合と同様に、分子
∫𝒙𝒑𝑄𝒙𝒑𝑒−𝛽𝐸𝐻𝒙𝒑
から式(20)の
⟨𝑄⟩𝐸
を括り出すことを考える:
∫𝒙𝒑𝑄𝒙𝒑𝑒−𝛽𝐸𝐻𝒙𝒑=∫∞𝜖=0∫𝒙,𝒑𝛿𝐻𝒙𝒑−𝜖𝑄𝒙𝒑𝑒−𝛽𝐸𝜖=∫∞𝜖=0⟨𝑄⟩𝜖∫𝐻𝛿𝐻−𝜖𝑒−𝛽𝐸𝜖=∫𝐻⟨𝑄⟩𝐻𝑒−𝛽𝐸𝐻=∫∞𝜖=0⟨𝑄⟩𝜖𝛽𝜖Ω𝜖𝑒−𝛽𝐸𝜖∣以下の【4.4-注1】より=1𝛼𝐸∫∞𝜖=0⟨𝑄⟩𝜖𝛽𝜖𝛿𝐸−𝜖≅𝛽𝐸𝛼𝐸⟨𝑄⟩𝐸
一方、式(21)の分母はこの式で
𝑄=1
としたものである:
∫𝐻𝑒−𝛽𝐸𝐻≅𝛽𝐸𝛼𝐸
よって、式(21)の統計平均のカノニカル表現は正しい:
⟨𝑄⟩𝐸≅∫𝒙𝒑𝑄𝒙𝒑𝑒−𝛽𝐸𝐻𝒙𝒑∫𝐻𝑒−𝛽𝐸𝐻(22)
式(20)に比べると、全体積分になっているので、計算しやすそうである。分母は分配関数(11)になっている。
【4.4-注1】デルタ関数の近似公式
適当な関数
Ω𝐸
に対し、
𝛽𝐸,Δ𝐸
を
𝛽𝐸=˙Ω𝐸Ω𝐸Δ𝐸\apprge6√∣˙𝛽𝐸∣
となるように定義する。
𝛽𝐸
は、「単調減少」かつ「
𝐸±Δ𝐸
の範囲で1次近似がよく成り立つ」とする。
この時、以下で定義される関数
𝛿𝐸−𝜖
:
𝛿𝐸−𝜖≡𝛼𝐸Ω𝜖𝑒−𝛽𝐸𝜖,𝛼𝐸≡√∣˙𝛽𝐸∣2𝜋𝑒𝛽𝐸𝐸Ω𝐸
はデルタ関数とみなせる。即ち、変化が緩やかな(=
𝐸±Δ𝐸
の範囲での変化が測定誤差の範囲で無視できる)任意の量
𝑄𝐸
に対し
∫∞𝜖=0𝛿𝐸−𝜖𝑄𝜖≅𝑄𝐸(23)
が成り立つ。
導出
関数
𝛿𝐸−𝜖
を変形していく:
𝛿𝐸−𝜖=√∣˙𝛽𝐸∣2𝜋exp[𝛽𝐸(𝐸−𝜖)]Ω𝐸Ω𝜖∣
∣
∣
∣
∣
∣Ω𝜖=exp[∫𝐸𝜎=𝐸𝛽𝜎]Ω𝐸𝛽𝐸(𝐸−𝜖)=∫𝐸𝜎=𝜖𝛽𝐸=√∣˙𝛽𝐸∣2𝜋exp[∫𝜖𝜎=𝐸(𝛽𝜎−𝛽𝐸)]∣𝛽𝜎≐𝛽𝐸+˙𝛽𝐸(𝜎−𝐸)+𝑜(𝜎−𝐸)=√∣˙𝛽𝐸∣2𝜋exp[˙𝛽𝐸2(𝜖−𝐸)2+∫𝜖𝜎=𝐸𝑜(𝜎−𝐸)]
ここで、
𝛽𝐸
は、単調減少かつ
𝐸±Δ𝐸
の範囲で1次近似でできるので、
𝑜(𝜎−𝐸)
部分は無視できて、ガウス関数とみなせる。(
𝐸±Δ𝐸
の範囲ではこの部分は効いてこないし、その外ではガウス関数の性質により
𝛿𝐸−𝜖≅0
となる。)よって、
˙𝛽𝐸→∞
の極限で、
𝛿𝐸−𝜖
はデルタ関数として振る舞う。ただし、式(23)を考える上では、そのような極限を取らずとも、
𝑄𝐸
の変化が緩やかなので、
𝛿𝐸−𝜖
をデルタ関数のように扱ってよい。
◼