重力理論編 第5章

アインシュタイン方程式

重力場を支配する方程式は、アインシュタイン方程式()。

重力場の方程式が知りたい

重力場を記述する方程式が知りたい。重力場の情報は計量テンソル場 の中に全て含まれるので、 に対する方程式となるはずである。前章では、重力の有無が、リーマン曲率テンソル がゼロかどうかで判断できることが分かった。よって、 に対する方程式だと思われる。 に対する方程式が、 に含まれる に対する方程式にもなる。

5.1アインシュタイン方程式

エネルギー運動量テンソル

ニュートンの重力理論で見た通り、重力の源は質量である。従って、求める重力の方程式には、リーマン曲率テンソル と質量が現れるはずである。

しかし、重力の源となるのは質量だけではない。等価原理により、物体が地上で受ける重力加速度は、物体の運動によらず変わらない。一方、相対論的力学によると、運動している物体は加速度を受けにくくなる。即ち、運動している物体のほうが大きな重力を受けることになる。ここで、作用・反作用の法則が成り立つとするならば、物体が地球を引き付ける重力についても、運動している物体のほうが大きくなるはずである。要するに、物体が作り出す重力は、運動している場合のほうが大きくなると考えられる。

運動に関する量といえば、エネルギー運動量テンソル である。よって、 が重力の源となると推測できる。

アインシュタインテンソル

重力の源がエネルギー運動量テンソル であることを認めれば、後は、これとリーマン曲率テンソル を結び付ける関係式が分かればよい。 は足の数(= の数)が違うので、 などとすることはできない。そもそも、 がゼロであったとしても、重力は存在し得る。例えば、地球の周りの宇宙空間は であるが、地球の重力場の影響を受ける、即ち、 である。

従って、 から が完全に決まるわけではない。そこで、 を縮約してみる: をリッチテンソルという。これは足の数が2つであり、 と一致している。では、 としてよいだろうか。両方とも対称行列であるので、その点では問題ない。

しかし問題がある。 はエネルギー運動量テンソルの保存則 を満たす。一方、リッチテンソル の場合、ビアンキの恒等式 において、最初の下付き添え字を上げた後、以下のような縮約を考えてみよう: ただし、 であり、スカラー曲率と呼ばれる。これにより、リッチテンソルは を満たさないことが分かる。しかし ととれば、 となる。

そこで、重力場の方程式として の形がとれそうである は定数) をアインシュタインテンソルという。式()が成り立つことを認めることにする。

係数合わせ→アインシュタイン方程式

式()の係数 を決めたい。そのためには、重力が弱く(=ミンコフスキー計量に近い座標系を取ることができ)、物体の速度が小さい時に、ニュートンの重力理論に帰着することを要請すればよい。実際に計算を行うと、 となることが分かる。従って、求める方程式は となる。これが求めたかった方程式であり、アインシュタイン方程式と呼ばれる。